書 斎 


座右の銘(ざゆうのめい)

人間は努力する限り迷うものである (ゲーテ)


 少年時代、読書少年だった私だが、中学高校時代、読書から遠ざかっていた時代があった。ところが音楽大学に入学した18歳から、また私の読書熱が復活し、18歳19歳の頃には『ファウスト』、『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代・遍歴時代』などを読んだが、特に『ファウスト』は、強く心に残った。その時代は60年安保直後の時代で、東大などのエリート大学生の間には、サルトルや吉本隆明などが良く読まれ、そういう本を小脇に抱え、「20億の飢えたる民に文学は有効か?」などと、政治や文学を語り合っていたようだが、その時代、いまさら?『ファウスト』を愛読するような青年は、そう多くはなかったのではなかろうか。
 ところで、20代に入ると近代文学、特にロシア文学を塾愛するようになり、その中でも特にドストエフスキーからは、人間の見方について、コペルニクス的大転換を迫られるような衝撃的影響を受けたが、精神が、不安と懐疑に精神が苛まれたとき、ゲーテの言葉に帰ると、そこには、人間存在に対する揺るぎない信頼があり、不安さえ意味あるもととして、それを力に変えてくれた。
 「人間は努力する限り迷うものである」の言葉は、次のようなヴァリエーションを生み出しうるのではなかろうか。
「人間は過ちを犯すものである。しかし、絶えざる努力によってその過ちを経験の糧に変え、前に進むことが出来るものである。」人間を、自分自身に置き換えても、また人類に置き換えても、その言葉は成り立ちうるのではないかと思う。



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